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2016.10.20
1年生Geography(地理)の授業のひとコマ 木川先生編“The growing water challenge” 【増え続ける水問題】
1年生の「地理(Geography)」は、基本的に2人の先生が担当しています。週3時間はカナダ人教員Jeff Willard先生、週2時間はアメリカ留学経験のある木川梢先生です。両教員ともイギリスのOxford University Pressが発行されている英文教科書を使用しています。よく似ているが、同じTextbookではない。
先日はWillard先生のクラスを見学した(10月15日のブログを参照下さい)が、今回は木川先生の授業に入った。
チャイムが鳴りやむやいなや、木川先生は
“OK, How is everybody? What’s the date today?” と英語で質問。
生徒から、”October 19th”. という答えが返ってきた。
本日の授業テーマは
“The growing water challenge” 【増え続ける水問題】
The human population is rising. Everyone wants more water. What can we do? Find out more here.(世界人口が増え続ける状況下、水の需要が増大しています。どうすれば良いのでしょうか。この章で解決策を考えてみましょう)と教科書の導入部分に書かれており、前回の授業範囲を復習・発展させながら、新しいページに入っていく予定だ。
単元冒頭の書き出しを読んで、皆さんも気付かれたと思うが、日本の教科書の書き方とずいぶん異なる。
日本の場合、生徒が正確な知識を習得できるように「事実を記述する」というスタイルだ。しかし、欧米の教科書は、例えば、水不足という問題がある、と問題点を示す。そして、どうすればその問題を解決できるのか、問題解決の方法を生徒に考えさせる。クラスでも考えさせ、議論(Discussion)を促進するために、こういう取り組みをしているという実例も示す、というスタイルだ。教科書編集方針や記述方法そのものがアクティブ・ラーニングに適している。
さて、余談はさておき、本題に入る。
“Do you know this paper?” という質問から授業が始まった。
木川先生が手にしているのは、水道の「ご使用水量のお知らせ」兼「請求予定金額のお知らせ」。平たく言えば、水道料金の請求書・口座振替領収書だ。
“I live in Sakai-city. Water in Sakai is very expensive compared to other cities.
世界の水問題に詳しい木川先生は、何と、水問題に関心を抱くあまり、堺市の水道メータの検針も体験しているとのこと。実際、このpaperに検針員として木川先生の名前が印字されていたのには驚いた。私も堺市の住民だが、他の市町村に比べ堺市の水が高い! 自分が水道料金の高いところに住んでいるとは知らなかった。市町村によって料金が異なるのですね。
もっとも、授業を「検針」という言葉を除いてAll Englishで始めたことにも驚いた。英語も使って授業をすることになってはいるが、中学校を卒業してわずか半年余り。生徒がほぼ英語オンリーの授業について来ているのにも驚いた。
“Is the demand for water increasing or rising? “水の需要が増えているかという質問だが、答えは当然”Yes”
“Why?” と矢継ぎ早の発問。
生徒からは”Our life is growing.” とか、”The population of the world is increasing.”などの答えが返ってきた。日本人教員にもかかわらず、生徒たちはちゃんと英語で答えている。
“What is the population of the world now? How large is it?” と間髪を入れずに別の質問。
“7.3 billion” (73億)とひとりの生徒。
“How much is the population growing every year?” (毎年どれくらいの人口が増えているの?)と立て続けに質問。
“Eighty million people.”(8千万人)と別の生徒。
“That’s correct”(その通りです)と木川先生。
次の質問は、
“As countries develop, why do we need so much water? “(国が発展すると、どうしてたくさんの水を必要とするの)
生徒たちは、肉を食べるようになるから、とか、ゲームとかいろんな物がほしくなるから、とかいろんなことを言っていた。もちろん、英語で。木川先生は生徒が答えるたびに、”Good!”とか、”What else?”とか、どんどん生徒の意見を引き出そうとする。
木川先生はこの質問に答えるのに、次の英語表現が使えるよ、と英文紹介。
“As countries develop, our demand for ○○○ will increase.”
(国が発展するにつれて、○○○に対する需要が増えていく)
この○○○に何が入るのか。
meat であったり、waterであったり、more goodsであったり、electricity(電気)であったりしますよね。このあたりのことは少し日本語も使いながら、生徒にrepeatさせて、英語表現の幅を広げる工夫をしていた。
ところで、米を育てるのと、小麦とでは、どちらの穀物がより多くの水を必要とするのか。
Which crop needs more water, rice or wheat?
答えは“Rice”。米は主にアジアモンスーン地域で収穫され、wheatはdry area(乾燥した地域)でも収穫できる。
”One kilogram of rice needs 2,500 liters of water. Wheat needs less water.”
では、牛を育てるのにどれだけの水が必要か。肉食が進むと、水の消費量が増える。1kgの食糧を生産するのに必要な水の量は
・牛肉20,000リットル ・鶏肉 4,500リットル ・米 2,500リットル ・小麦 2,000リットル
と言われている。牛丼1杯で1,890リットルの水を消費すると言う。
その後、話は
“Do you know what LEDCs stands for?” と発展途上国(LEDCs)と先進国(MEDCs)に展開。
LEDCs stands for Less Economically Developed Countries.
MEDCs stands for More Economically Developed Countries.
そして、
In LEDCs, many people don’t have access to ○○○。
この○○○の中は、名詞でもOK、動名詞でもOK、と英語科の先生のような説明も。
“have access to”は便利な表現で、「使える」「利用できる」という意味という。
「では、○○○に何が入るのか、3分だけ時間をとって話し合おうか。」
この部分は日本語OKで、3分間、隣の席の2人~3人で話し合い。この後、英語で○○○に何が入るか、生徒たちが答えていく。
- clean safe water
- medical care
- transportation
- electricity
- education
など。先生はinformationはどう? と生徒が気付かなかった視点も持ち出し、それぞれの答えについて説明を加える。
発展途上国のことで、インドのことが例に挙げられていた。
インドの人口は12億。トイレにアクセスできない人は4億。どこでトイレする?
生徒からは、川であるとか、木の陰とか、お店とか、トイレ屋さんとか、いろんな答えが飛び出した。
「トイレ屋さんでは、入口に番人がいて、少しだがお金を払ってトイレする。子どもがトイレを終えると飴(あめ)ちゃんをあげる。なんでか、知ってる?」
トイレを使う習慣を付けさせるため、と英語と日本語で生徒とやり取り。開発教育での重要単語のひとつ、”sanitation”(公衆衛生、下水設備)も生徒に説明。「主にトイレのことだよ。」と。
授業の様子を文章に落とすと、どうも平たくなってしまうが、残念。しかし、生徒の反応や答えを引き出しながら、授業はポンポン展開していく、そんな躍動感を感じた。知的な刺激も受けた。
やがて、”water scarcity”のことや、農業(agriculture)や産業(industry)における”demand of water”(水の需要)のことなども話されていた。
授業後半で、新しいページに突入。
Tackling physical water scarcity(水不足に対する取り組み)
ここでは、生徒に日本語に訳させ、英文の意味を1文1文、日本語でも確認しながら説明を加える。一部だけ紹介したい。ただし、日本語訳はここでは割愛する。
Physical water scarcity means an area does not have enough water for everyone. How can we tackle this?
1 Use water more wisely
As you saw in Unit 2.2, agriculture is the biggest user of water.
一番水の消費量が多いのは農業分野。水消費量の7割は農業と言われている。では、無駄を省き効率的に水を使うにはどうすればよいのだろうか。
- Water corps only when they need it. For example, sensors can monitor leaf temperature, and turn sprinklers on when a certain temperature is reached.
「ここでは、”water”は動詞で使っているよ。」と説明。動詞では「(穀物に)水をやる、水をまく」という意味だ。
穀物の葉にセンサーを付け、所定の温度になったらスプリンクラーを稼働させるハイテク農法を実施している地域がある。”certain”を生徒が「所定の」と訳したとき、「良い訳ですね。」と木川先生はほめていた。
- Grow crops that need less water. Corn is a very thirsty crop. Potatoes need a lot less water.
“thirsty”って、人や動物に適用すると「のどが渇く」という意味になる。「ここではどんな意味かな」と生徒に問いながら、単語理解を確認する。「水をたくさん必要とする」と生徒が答える。ちゃんと予習してきていることを確認。
総評
授業終了後、授業の多く(だいたい8割くらい)で英語を使っていたこと、生徒が生き生きと英語で答えていたこと、そしてこのレベルの授業を1年生にしているのに驚いたことを木川先生と話し合った。木川先生は「滝本先生が授業見学に入ったので、緊張して頭が真っ白になりました」と言いつつ、1年生の英語力が伸びている、と報告してくれた。また、生徒たちが柔軟な発想でいろんな答えをしてくれるので、授業が楽しいと言ってくれた。木川先生の引き出しの多さに驚くとともに、生徒たちの発想の豊かさにも感動した。
入学してわずか半年余りの1年生。確かに予習・復習などよく勉強している。内容が難しいときがあり、苦労もある。しかし、高校生という若い頭脳で、どんどん新しい知識を吸収している。
本校教務の責任者として、「地理(Geography)」5時間のうち、3時間は外国人教員が、2時間は日本人教員が教えることで、中学校時代に日本語でしか「地理」の授業を受けたことがない生徒たちも、最終的にAll Englishの授業を受けることができるように工夫していることを補記させてもらいたい。
入学当初は静かだった生徒たちが、少人数のアクティブ・ラーニングで問題解決を目指していろんな答えを返してる姿はまぶしかった。ある男の子は、顔を赤くしながら英語センテンスで自分の考えを伝えていた。少人数クラスといえども、英語を使うのは、勇気が必要で緊張もする。しかし、このように果敢に挑戦している生徒たちの姿に感動し、誇らしく感じた授業見学となった。
教育主任 滝本武
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