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2022.12.14 生徒の活躍
アジア学院大阪研修受入プログラムに参加しました!
11月11日(金)~13日(日)大阪YMCAが主催しているアジア学院大阪研修受入プログラム「ソーシャル・イシュー・フィールドスタディツアーin Osaka 2022」に関西インターナショナルハイスクールの教員2名(安井、南)と2年生4名(田中優、小林羅舞、伊藤皐樹、立松風乃)が参加しました。
アジア学院(https://ari-edu.org/)は栃木県那須塩原市にある農村指導者養成専門学校です。「世界中から集まった人々が平和的かつ持続可能な方法で『共に生きるため』のアイデアを分かち合う、コミュニティを基盤とした学校」という理念のもと、毎年アジア、アフリカ、中南米、太平洋諸国の草の根の団体から農村指導者を日本に招き、9ヶ月間の集中的な研修を行なっておられます。学生さんたちは、自己を深く変革するような学びを経験し、自らのコミュニティの最も重要な問題への解決策を見出していきます。この3年間、世界規模での新型コロナ感染や内戦などの国内情勢によって、アジア学院にやってくる留学生にも大きな影響が及びましたが、今年はなんとか学生数も増え始めているようです。
毎年の大阪での研修は彼らの学びの総仕上げとなるフィールドスタディの一環として行われるものです。新型コロナ感染拡大のため、3年ぶりの再会となりました。
11日(金)アジア学院の先生方が運転される2台のバスで大阪に到着した後、歓迎交流会。いつもならボランティア参加のメンバーだけでなくホームステイ先のホストファミリーの方々が参加し賑やかなイベントなのですが、コロナ禍の今回はホテル宿泊となったため、受け入れ先のYMCAの方々と少数のボランティアにより小規模な会となったのは残念でした。
12日(土)参加者たちは以下の4つのグループで研修を行いました。
(1)貧困、日雇い労働者、ホームレスに関する研修(釜ヶ崎エリア)
(2)差別、マイノリティ、沖縄に関する研修(大正エリア)
(3)差別、マイノリティ、在日コリアンに関すること(鶴橋エリア)
(4)茶道、竹細工など日本文化体験(ひらく学校・奈良)
それぞれのグループに参加した生徒たちからのコメント
<釜ヶ崎エリアに同行した田中優くん>
今回僕は釜ヶ崎というホームレスが日本一いるといわれている町に行きました。そこで私は今回学んだことはホームレスの人が社会復帰するにはとても高い壁があることです。日本の現行制度ではとても壁があるというのを知り、とても驚きました。そして、参加していた外国人に『釜ヶ崎は確かに問題のある街だけど、自分の国はもっと深刻な問題を抱えている。』と言われたときに日本だけじゃなくどの国も抱えている問題があって、それを海外の人に知ってもらうことはとても大切だなと思いました。今回僕は海外の方に日本の社会問題を少しでも知ってもらえる手助けができてとてもうれしかったです。
<大正エリアに同行した小林羅舞さん>
私は大正チームに参加して、オキナワのことについて学びました。当日にスケジュール表を見たとき大正でなぜオキナワの勉強なのか分からなかったのですが、大正区には第一次世界大戦後から多くの沖縄からの移住者がいるからでした。金城(きんじょう/かなぐすく)さんから金城さん本人の経験や想い、沖縄の人たちのバックグラウンド、歴史、現在も過去も差別されていることについてのお話を聞きました。沖縄も日本の一部なのに、未だに差別があるということを初めて知りました。うまれてからずっと日本に住んでいる私でさえも知らない問題がたくさんあり、多くの学びがありました。アジア学院の生徒さんたちの中には少数民族の人もいて、差別された沖縄の人たちと重なる部分がありとても共感していました。感想をシェアする中で、『日本は発展していて、もっと平和な国だと思ってた。』という方が多くて日本は平和なイメージが強いことが改めて分かりました。金城さんのお話の中で、『正しさの暴力』という言葉が一番印象に残っています。数多くのグループがある中でどのようにしてお互いが難なく共存できるのか、平和に近づくために自分たちが何をできるのかについて話し合った上で、私は平和を作ることは到底できないけれどみんなが平和を目標にして過ごせばより平和に近い世界を作ることができると思いました。そして今回知ったオキナワのことだけでなく、世界中で起きている差別問題について若い世代の私たちが積極的に調べて発信しないといけないと思いました。
<鶴橋エリアに同行した伊藤皐樹さん>
私は元々、韓国アイドルが好きでコリアンタウンに何度か行ったことがあります。ですが歴史やそこに何故コリアンタウンが出来たのかこれまで勉強してこなかったと改めて思い知りました。今日、在日コリアンの方と共に歩き、講演を聞くことができて、より異文化の理解が深まったと感じました。
<ひらく学校・奈良に同行した立松風乃さん>
奈良県の生駒市へバスで行って茶道の説明を受けました。そこでは、茶道の道具はほとんど竹でできている、そしてそのほとんどが手作業だというお話を聞きました。それを通訳ボランティアの方が通訳して外国人の方に伝えていました。
その後、茶道具をつくる職人さんのところへ行き、tea spoonと呼ばれる茶杓をみんなでつくりました。職人さんが簡単にスイスイつくっているのに対し、体験者はかなり苦戦していました。その後、つくったものは持って帰りました。茶道体験もでき、それぞれの流派の違い、心構えなどを教えてもらいました。
一緒に参加した海外の方々はとてもフレンドリーで話していて楽しかったです。でも、体験の中で日本のことについて聞かれてもしっかりと答えられなかったのはなんだか悔しかったです。ディスカッションでは体験のみんなの感想を聞いて、改めて、国柄もあると思うけど、個性を感じられてとても楽しかったです。
最後に安井先生のレポートです
ARI(アジア学院)研修生12名(インドネシア、ナイジェリア、インド、ウガンダ、日本から来た方々)本校からは田中優、安井、その他YMCA学院高校からの高2生の15名グループで、11時から、16時まで、釜ヶ崎にてフィールドワークを行った。
研修生たちを新今宮でバスにピックアップしたのち、生田武志さん(野宿者ネットワーク代表、「ホームレス問題の授業づくり全国ネット」共同代表、「フリーターズフリー」編集発行人)と、松本裕文さん(NPO法人釜ヶ崎支援機構事務局長)が待つホームレス支援センター(あいあいサポートセンター)へ。雑然した路地を抜けて2階建ての古いビルを上がると、まずはたくさんの背広、ワイシャツ、ズボンが所狭しと吊り下げられているのが目に入った。初めに、生田さんからのお話。大学生時代に使命感を覚えた釜ヶ崎で、実際に日雇い労働者として、ホームレスたちと生活を共にする実体験をしたことを通して見えてきた諸問題に、それ以来ずっと取り組み、支援を続けられている。なぜ、貧困が起こったのか、なぜ、衣食住を失うことになったのか、行政との関わり、各支援団体の活動内容、釜ヶ崎に起こってきた歴史、そして現状などを、詳しく語って下さった。 (http://www1.odn.ne.jp/~cex38710/network.htm) 参照。
生田さんが配って下さったプリントのカフカの階段(図参照)は、貧困に陥る構図を如実に表しているものである。下まで転がり落ちるのはあっという間で、そこから一気に上まで崖を登るのは不可能である。それを防ぐために、一段毎に網(セーフティネット)を取り付け、受け皿となるための活動を、生田さんは日々取り組み、行政に訴え続けている。
夜回りから見えてくるホームレス、特に身体的、精神的に弱った高齢者の現状は、かなり悲惨だ。近年は、若者たちによる、弱者への襲撃も増えてきているという。突然、火を点けられたり、石を投げつけられたりすることも多発しているらしい。年末年始の寒い時期に、仕事もなく、寒さと飢えから体は弱りはて、命を落としていくホームレスの人たち。病院に行きたくても、健康保険がない。たどり着いたところで、門前払い。あるいは、たらい回し。未だに、その実情が現存することに驚きを隠せなかった。
続いて、松本さんからは、野宿者たちに、仕事を提供することに焦点を当て、活動されているお話を伺った。NPO法人でも、松本さんたちのように、仕事を提供することに従事する団体や、炊き出しに、或いは、住居斡旋に重きを置くなど、様々な支援団体がある。働きたくても、その手段がない。面接を受けるのにも、服がない。(前述の部屋のスーツ、ワイシャツは貸し出しのため)交通費がない。受かっても、お給料までの生活費がない。仕事を得るために必要な様々なステップをクリアするための支援活動に、松本さんたちは日々奮闘されている。センターには、一日200人ほどの、労働者たちがやってきて、それぞれバスに乗って、その日の現場に向かうという。お話の中で、特に注目すべきだったのは、最近は、若者の生活困窮者が増えているということ。彼らは、自分からは発信しない。相談に来ない。そんな人たちが唯一注目してくれるのは、youtubeだそうだ。松本さんはそこに着眼し、すこしでもセンターに相談しに来てくれるように、様々な動画をyoutubeにあげている。そして、若者に関して言えば、コンピューターに強い彼らに、その関連の仕事を手伝ってもらって新しい形の釜ヶ崎を作り出そうとされている。
お昼からは、3時間余り、フィールドワークに繰り出した。土曜日ということもあって、平日の様子と若干違っていたようだが、それでも、何人かは三角公園で談笑し、何人かは、酒場で楽しみ、キリスト教会からは、賛美の元気な声が響きわたり、みなそれぞれ楽しそうに過ごしていた。想像していたより、清潔な整備された路上だったが、ただ、いたるところにひしめき合う、小さな窓のアパート群は、かつての困窮した暮らしを物語っていた。「空き家になっているアパートがたくさんあるけど、どうして」との質問に、お金がなくて入れない人、お金があっても路上生活を選ぶ人、いろいろだという。シェルターにも案内してもらったが、施設内、禁煙禁酒のためもあってか、思ったより利用者が少ないイメージであった。子供たちの家もあり、入口には小学生低学年くらいのやんちゃな可愛らしい姿が伺えた。松本さん曰く、今後は子供たちの笑顔、笑い声あふれる町にしていきたいそうだ。
最後の振り返りでは、各々の国の貧困事情を語ってもらった。似ているところもあるし、全く違うところもあった。インドでも、インドネシアでも、所謂スラム街は、危険で誰も近づけない場所のようだ。また、ウガンダの方が、困窮して行き場をなくした子供たちが甘言で連れさられ、最悪その子たちの行末はテロリストだと言ったことには、言葉を失った。ナイジェリアの方の「なぜ、日本は家族、親戚が、親が困窮したら助けないのか」との質問には、考えさせられるものがあった。昨今クローズアップされている50・80問題をはじめ、日本ならではの積み重なった諸問題が、解決を妨げている。また、「日本は、コミュニティが希薄な感じがする」という鋭い意見も出た。家族、隣人、職場の仲間、などにおける人間関係がどうしても薄い。全てに困窮した人々が、ここ釜ヶ崎に自分の居場所を求めて集まってくる。
親の世代から伝え聞く釜ヶ崎、あいりん地区のイメージは、暗く、不衛生、怖い、といった差別、偏見に満ちたものだった。そこに近寄ってはいけない、そこの人たちと関わってはいけない、と教えられてきた。恥ずかしながら、私もそのような偏見を持っていた一人である。しかし、今回、実際に足を運び、自身で見聞きし、肌で感じることにより、自分の考えは変わった。また、違う国の諸事情を聞いて、このテーマは、自分自身が避けて通ることのできない問題として、今後深く取り組みたいと実感した。
英語科担当 南 美佐江
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