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2025.02.28 大学訪問

京都大学医学部訪問(2月18日)

約40年前、筆者が大学生時代、文学部でアメリカ文学をご教授いただき、卒業論文の指導でたいへんお世話になったCarl Becker先生を、生徒10名と共に訪問しました。

先生は宗教学、倫理学がご専門で、現在は京都大学医学部内の「政策のための科学ユニット」特任教授として、学生の指導に当たられています。

3年生の生徒が総合型入試の準備のためにBecker先生の著書を読んだことがご縁で、今回の訪問の機会ができました。

天満橋集合~出町柳駅から京都大学キャンパスへ

寒い朝になり、しかも普段のKIの生活よりもずいぶん早い 8:20が集合時間でしたが、時間通りに全員集合でき、無事予定していた特急で出町柳へ。百万遍から東大路を歩くと広い敷地に京大の建物が続き、ちょっとワクワクしてきます。医学部G棟の前でBecker先生にお迎えいただきました。
京都大学医学部訪問

講義の前にBecker先生からの洗礼

さて案内された演習室の席についたとたん、Becker先生から「ひとり30秒ぐらいで自己紹介をしてください。出身地や年齢は言わなくていい。何に興味があるのか、これから先の5年間に何をしようとしているのか、話してください」と言われ、全員一気に緊張モードに!
口を開くたびに先生から鋭い質問やコメントが矢のようにやってくる。
それに対して一生懸命脳内フル回転で答える生徒たち。
Becker先生の授業の洗礼を受けた瞬間でした。
京都大学医学部訪問

Christopher Wrenの逸話―生きがい、やりがいについて

現在、日本は先進国の中でいちばん自殺者の多い国です。生きる意味がわからない、将来に希望が持てないという人が、世の中にあふれています。
今回参加した3年生の中には大学で「若者の生きづらさ」について研究をしようとしている生徒もいます。
京都大学医学部訪問
そこで、Becker先生の講義のテーマは「生きがい感を如何に探せるか」。
まずChristopher Wrenの逸話から始まりました。
こんなお話です。
1666年のロンドンの大火の後、建築家Christopher Wrenはセントポール大聖堂の再建するのだが、その再建現場で三人の石工職人に「仕事は辛くないか。」と話しかける。

一人目は「仕事だからやらなきゃいけない」(不可欠だから)

二人目は「家族のためにお金を稼がないとね」(他者のため)

三人目は「歴史に残る大聖堂をつくっているんだよ」(やる気、誇りを持って)

とそれぞれ答えた。

同じ仕事をするにも、三人目の職人のように夢をもって働きたい。かけがえのない今この瞬間を生きるためには「目的」が必要、ということです。
京都大学医学部訪問

Viktor Frankl 『夜と霧』

次にBecker先生が取り上げられたのはヴィクトール・フランクルの『夜と霧』でした。

第二次世界大戦中にナチスの強制収容所に収監され、奇跡的な生還を果たしたユダヤ人の精神科医フランクルが、冷静な視点で収容所での出来事を記録するとともに、過酷な環境の中、収監者が何に絶望したか、何に希望を見い出したかを克明に記したのが『夜と霧』です。
収容所という絶望的な環境の中で希望を失わなかった人たちの姿から、人間の「生きる意味」とは何なのかを探ります。強制収容所からの生存者を生存者たらしめたのは、体力ではなく精神力、「生きがいだった」とわかります。

どんな状況でも、今を大事にして自分の本分を尽くし、人の役にたつこと。
そこに生きがいを見いだすことが大事ということです。

生きがいを見出し、社会に貢献するために

生きがいを見出し社会に貢献する人々について、具体的な例を挙げ、どのようなプロセスで生きがいを感じられるような取り組みができたのか、を説明いただきました。
香港の自殺数大幅削減の例を用いて、基本的な4つのプロセスを記します。

①解決したい問題は何か・・e.g. 香港での高い自殺率(特に田舎から大都会へ出てくる労働者)

②必要な下調べ・・e.g. 飛び降り自殺、練炭自殺(一酸化炭素中毒)が多い

③政策提案・・e.g. ベランダに有刺鉄線、練炭箱にソーシャルワーカーの電話番号記載

④解決・・e.g. 大幅な自殺削減を実現

さて、皆さんは日本の現状の中で、何が問題だと考えていて、何に生きがいを感じられそうですか? どんな目的のために人生を捧げられそうですか? 自分のやりがい感をどう活かせそうですか?
しっかり考えて、やりがい感を得られる経験を増やしていきたいですね。

学食での歓談~キャンパス・ツアー~吉田神社へ散策

内容の深い講義と活発な質疑応答の後、時計台前のカフェ・レストランに移動し、ランチをとりながらもBecker先生との熱心な議論が続きました。特に1年生、2年生の男子たちが先生を取り囲み、宗教や教育について質問攻めにしているのは微笑ましく、またそれに対してBecker先生がひとつひとつ丁寧にお答えいただいたのも、たいへんありがたい時間でした。
京都大学医学部訪問
ランチの後はBecker先生にキャンパスを案内していただきました。
京都大学吉田キャンパスは、明治時代初期、尾張藩邸の跡地にできたという歴史も教えていただきながら、さまざまな学部の重厚な建物、敷地に点在する遺跡(弥生時代や平安時代のものも!)、歴史展示室を見学させていただき、長い歴史をもつ広大なキャンパスに圧倒されました。

雪が散らつき始めましたが、せっかく来たのだから、とBecker先生のご好意で、足を伸ばして吉田神社へ。
大学のキャンパスの近くにこんな素敵な散策場所があるのは素敵です。
生徒たちは熱心に手を合わせていましたが、どんなお願いをしたのでしょうか・・・。
京都大学医学部訪問 京都大学医学部訪問

人との出会いも大切に

私はと言えば、生徒たちと京大正門まで戻り解散した後、Becker先生と思い出話に花が咲きました。40年以上経っても学生時代の私のことをとてもよく覚えてくださっているのは、ほんとうにありがたく、また、KIの生徒たちに、著名な先生の講義を聴く経験をしてもらえて、とても幸せな一日でした。

KIの生徒たちにもこれから、多くの人に出会い、大いに議論し、その経験を生かしてもらえることを期待しています。
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3年担任 英語科 南 美佐江

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