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2016.12.13

2年生『政治・経済』の授業のひとコマ― 法曹ロールプレイ「模擬裁判」

2年生の政治経済の夏休みの宿題は裁判傍聴

今回のアクティビティ「模擬裁判」は2年生政治・経済の単元「日本の統治機構・裁判所と司法」を終えた時点で実施したのですが、この単元を実施する前段階に準備として、「裁判の傍聴」を2年生全員に課しました。以下はそのレポートの設問分です。

 【難易度 ★★★★☆】裁判傍聴  ~司法に興味のある生徒向け~ 教科書p.56~p.61参照

①裁判の傍聴をし、その内容をレポートしてもらいます。(裏面に記入)

②Ⅰ)傍聴した日時 Ⅱ)裁判所名、法廷の名前 Ⅲ)裁判(訴訟or事件)の概要を箇条書きで記載し、

③Ⅳ)視聴した裁判の流れ、気付いた点、感想等々を文章で記入すること。

④平日の10~17時で開廷されていれば事前予約も費用も不要で傍聴することができます。「傍聴人入口」の扉から中に入り、傍聴席に座って静かに傍聴してください。

⑤メモを取ることは自由ですが、撮影、録音、録画は禁止されています。携帯は必ずOFFに!

⑥どのような裁判が行われているのかは、法廷の入口に掲示されている裁判予定表(開廷表)で確認してください。すべての法廷の開廷表を玄関ホールなどに備え付けている裁判所もあります。

⑦第一審にあたることの多い地方裁判所がオススメです。家庭裁判所や一部簡易裁判所は傍聴不可です。

⑧服装に気をつけましょう。華美な服装奇抜な服装、メッセージ性の強い服装は避けましょう。

⑨裁判傍聴を選択する場合は裏面に記入すること。

【参照】見学・傍聴案内 近くの裁判所の情報を調べる

http://www.courts.go.jp/kengaku/saibansyo_joho/index.html

旅行等で裁判所に行くのが難しい生徒がいることも予想される為、夏季課題は毎年選択式で「裁判傍聴」「選挙に関する課題」「小論文執筆」3種類の出題から選べるようにしています。今年度は司法への関心が高い生徒が多いのか、ほとんどの生徒が裁判傍聴を選択しました。生徒達は「普段接することのない社会の闇の部分を見た」「被告人が泣き崩れたり、検察官と言い争いが始まったりヤバかった」「大阪は覚せい剤が多かった」といった感想を伝えてくれました。社会と司法に関する良い刺激を貰ってきたようです。

法務省の裁判員制度に関する教材「よろしく裁判員」

これは平成21年度5月21日に始まった裁判員制度を周知、啓発する為に法務省が作成した学校向け教材で、その目的は以下の通りです。

http://www.moj.go.jp/keiji1/saibanin_info_saibanin_kyozai.html

①裁判のロールプレイイングを通して、司法や裁判員制度についての関心を高める。

②証拠の整理や他者との討論から事象を多面的・多角的に考察し、総合化して公正に判断する。

③個々の事実を正確に把握して評価し、また、その事実に基づいて自分の考えを適切に表現する。

④刑事裁判及び裁判員制度の仕組みと意義などについて理解する。

実は実際の日本の裁判の有罪率は99.9%以上(やっていないと容疑者が主張している否認事件も99.5%)だと言われています。(検察が確実な証拠がある場合以外は不起訴にしてしまう為)しかしながら、この教材の犯行内容(強盗致傷)や状況設定(目撃者不在、指紋無し)は非常に巧みで良く出来ており、「有罪か?無罪か?量刑は?執行猶予の有無は?」と受講者を悩ませる内容になっております。

ですが、1コマで完結する必要があったため、教材通りに実行することは出来ません。多少アレンジして、今回は裁判のシナリオパートに重点を置いて今回は実施しました。また、当日のシナリオは以下の通りです。

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メインキャストは①裁判長(司会進行)、②弁護士、③検察官、④被告人、⑤証人(78歳被害者の息子)の5名。残りの生徒は裁判員役で6名1グループを3グループ作りました。一通りシナリオを読んだ後、検察側の求刑に対し、裁判員グループ内で「有罪、無罪、量刑、執行猶予の有無」を議論し、結論を下します。強盗致傷の場合は(適用される法律:刑法第240条前段によると)「死刑はなし。無期懲役、又は懲役6年以上」となっているので、この範囲内で判断することになります。

実際の裁判員制度もそうであるように、被告人の態度や人相、その他外的要因によって裁判員の心証は大きく左右されます。既に夏季課題で裁判の現場の雰囲気を体験してきた2年生です。このロールプレイを通じて、司法に対する更なる当事者意識を培うことが出来れば今回のアクティビティは成功と言えるでしょう。

7月18日(火)2-1政治・経済アクティビティ「よろしく裁判員」

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2-1検察側の求刑、懲役11年に対しては、

グループA:有罪、懲役11年、執行猶予無し

グループB:有罪、懲役6年、執行猶予1年

グループC:有罪、無期懲役、執行猶予無し

判決。有罪、懲役11年、執行猶予無し

総評:

メインキャストの5名には事前にシナリオを渡して予習するように言っていたのですが、裁判で使われる漢字の読みが一部の生徒には難しかったのかもしれません。ところどころ詰まりつつ、何とかシナリオを読み終えました。裁判員が審議する時間は約5分。同じシナリオを聴いたとしても「懲役6年、執行猶予1年」という最小の求刑から、「無期懲役、執行猶予無し」という最も重い求刑まで、グループによってバラつきが出たのは興味深いことだと思いました。

7月20日(木)2-2政治・経済アクティビティ「よろしく裁判員」

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2-2検察側の求刑、懲役10年に対しては、

グループA:有罪。懲役8年、執行猶予無し

グループB:有罪。懲役10年、執行猶予あり

グループC:有罪。懲役10年、執行猶予無し

判決。有罪。懲役9年、執行猶予無し

総評:

限られた時間内でシナリオを暗記することは困難なので、5名のメインキャストは予め用意されたシナリオを朗読するだけに留まってしまいがちです。舞台や演技の経験があれば話は別ですが、普通の高校生は、法曹になりきって迫真の演技をすることは中々出来ません。

少し中だるみしてきたな、と感じた頃に変化が起きました。被告人役(30代ニート、求職中。親からの小遣いを遊興費に充てる生活をしている設定)の生徒が突如、ちょっとしたアドリブを加え始めました。シナリオの内容は大きく変えることなく、言葉尻をちょっとダラしない感じにしたり、無気力な感じにしたり。彼なりに被告人の設定のリアリティを出そうとしてくれたのだと思います。

心理学で「スタンフォード監獄実験」という有名な実験があります。人は例えフィクション、お芝居であったとしても、元々の性格とは関係なく、何かしらの役割を与えられただけでそのような心理状態に陥ってしまうのかもしれませんね。

 

 

社会科 松尾祐樹

 

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